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2024/12/05 EDIT CATEGORY: TRACKBACK URL 

初めてのオバケ ( 2 )







曾祖母は俺が小学校3年生くらいの時に死んだ

当然、俺も父母と共に曾祖母のお通夜に出席した

小学生の俺にとって、お通夜は退屈なものだった

なので少し年上の親戚の兄ちゃんと遊んでた





お経読んでた坊さんも帰って

親戚のオッチャン、オバチャンどもが笑いながらビール飲んだり刺身食べたりしてるのを見て

お通夜って大人は楽しいんだな・・・と、子供ながらに思った

親戚のオッチャンたちの顔が赤くなってきた頃

外でしとしと雨が降り出した




オバチャン 「 あらー 涙雨かしらねー・・・ 」

        「 はー・・・ あんたらはもう寝なさいな・・・ 」



ということで

俺と親戚の兄ちゃんは寝る事になったのだが

これがまた怖ろしい事に

お仏壇がある部屋の隣に

僕たちのお布団が敷かれていたんだよ・・・

障子戸一枚むこうに曾祖母の死体がある・・・





俺と親戚の兄ちゃんは

布団に潜り込んで目を閉じたけど

遠くの部屋から聞こえてくるオッチャンらの笑い声や

オバチャンらが忙しく歩き回る足音が気になって眠れなかった

そうこうしている間に

しとしと降っていた雨が本降りになり

終いには遠くで雷も鳴りだして土砂降りになった





流し目で隣の部屋の障子をチラ見した

仏壇の蝋燭の灯りがゆらゆらとぼやけて見えた

反対側の兄ちゃんのほうを向くと

兄ちゃんは枕から頭を起こして土砂降りの庭先を見ていた

俺も庭先のほうに視線を移した





庭先のほうの障子戸には

足元の所にガラスが入っていたから

庭の置石が土砂降りの雨に打たれているのが見えた

雷が ガガーン! と轟く度に

庭先の障子戸がビリビリと鳴って青白く光った

それを見た俺と兄ちゃんは

( おおー!)

と小さく声を上げた

その後も雷は何度も何度も轟いて

その度に障子戸が青白く光った

こんなのワクワクして眠れる訳がない

ですので

俺と兄ちゃんは

枕から頭を起こした状態で

庭先の障子戸をガン見してた訳です






もうオバケが出るシチュエーションは完璧に整いました

お通夜

土砂降りの雨

雷、ガガーン!

視線を一点に集中させる子供たち







はい

庭先の障子の向こうに人影きました!

いつのまに!

いつのまにそこに立ってた!

ずっと見てたのに!

障子の向こうの人影は微動だにしない

誰? 誰なの?

もしかしてお母さんですか?

それとも親戚のオバチャン?

僕らがちゃんと寝てるかどうか調べにきたの?

なぜだ・・・

何故、障子を開けて入ってこないのだ・・・

何故、そこにじっと立っている・・・

貴様・・・ 何者だ・・・






そのまま数10秒間

障子の向こうの人影はピクリとも動かず

僕らは口を半開きにしたまま、それを見ていた

そしたら

その人影が横向きになった

正面を向いて立っていた人影が横向きになった

背中を丸めた人影になった

どう見ても老婆の人影だな

おなかのところで両手でお盆を持っている人影だな

おまえは! 

曾祖母! 曾祖母じゃないか!

いつも不味いお菓子をありがとう!

だけども曾祖母ちゃん・・・

あのね曾祖母ちゃん・・・

曾祖母ちゃんはお隣のお部屋で死んでるよ?

こんなのおかしいよね?






曾祖母ちゃんの人影は

そのまま障子戸の向こうをスライドするように消えて行った

人間が歩くときは少なからず肩が上下する筈なのに

スケボーにでも乗っているかのように・・・






曾祖母ちゃんは僕らのとこにお菓子を持ってきたんだね

自分が死んでる事も忘れて







んん?

おやおや?

おやおやーーーっ!?

今日は38と一緒に親戚の子も居るじゃんか!?

これは是非ともお菓子をあげたいのう・・・

孫2人が喜ぶ顔が見たいのう・・・

決めた! あたしゃお菓子を配るぞ!

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

ちょっと忘れてたけど

あたしゃ死んでたな・・・・

孫が2人も揃ってたからテンションあがっちゃった・・・・・

こりゃ失礼・・・・・






みたいな話なんだろうね

これこそが俺が初めて見たオバケなんだが

ぜんぜん怖くなかった

むしろなんだか温かいモノを感じた

なんせ

その後の俺と親戚の兄ちゃんは

曾祖母のオバケを見たにも係わらず

顔を見合わせて

( すげー! 今の絶対にオバケだったな! ひいばあちゃんの! )

などとコソコソと枕を寄せて喋った後で

なんの恐怖心も抱かずに

次の日の朝までぐっすり眠ったのですから。


 






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