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2012 12月8日
12月に入ってから
初めて
ミゾレでもなくアラレでもなく
ちゃんとした雪が降った日
1cm程度のものだけど
冬になってから始めての、まとまった積雪だった。
夜にジイチャンが死んだ事を知らされた。
不思議とそんなにショックは受けなかった。
なんたって
もう、俺が20歳になる前から
母の姉が遺産争いの火蓋を切ってくれたお蔭で
俺はジイチャン家に行けなくなった。
行けなくなったと言うよりは
母の姉が自分の息子を引き込んで
ジイチャン家で同居を始めたせいで
俺にとってジイチャン家には近づき辛い状況になってしまった。
それでも
バアチャンが、こちらの近所の病院に通院する事になってから
1ヶ月に1度は
俺がジイチャン家までバアチャンを迎えに行っていた。
俺が玄関までバアチャンを呼びに行き
玄関先でバアチャンが出てくるのを待っていると
ジイチャンは用もないのに
部屋の襖を開けて出てきて
『 バアチャンむかえにきたんかぁ 』
『 さむなったな、さむなった 』
『 きをつけてなぁ 』
俺は
「 うん、寒くなった 」
「 ジイチャンも風邪ひかないように、きをつけてな 」
ジイチャン
『 うん、ジイチャンは大丈夫や 』
『 バアチャンたのむなぁ 』
そう言って
玄関戸を開けたまま
俺とバアチャンが車に乗り込むまで見送っていた。
こんなのバアチャン迎えに行く度に何度もあったよな。
昔と比べると
よそよそしい会話だったけど
少なくとも俺とジイチャン
孫と祖父の関係性みたいなモノは
互いの心の中で失われていないと思った。
そういう関係も
バアチャンが病院に通院しなくなってから
なくなってしまった。
もっと昔
正月や盆には親戚一同がジイチャン家に集まって過ごしていたけど
母の姉一族がジイチャン家で同居を始めてからは
誰も集まらなくなった
母の姉一族が完全にジイチャンたちを孤立させた。
それから10年以上も経って
ジイチャン・バアチャンと1度も会わずに10年以上も経って
ジイチャンが死んだ。
ショックもなにも
どうやって実感しろって言うんだよジイチャンよ?
12月10日
ジイチャンの納棺&お通夜に参列す。
葬式の事とかチンプンカンプンだから
どういう流れでアレだったのか、よく分からんけれど
とにかく
ジイチャンの葬式に親族として参列す。
正直のところ
まさか呼ばれるとは思わなかった。
よくもあれだけ親戚関係を滅茶苦茶にしといて
俺らを呼べたもんだな。
どういう気持ちで俺らを参列者として迎えられるんだ?
ふざけるなよ。
そういう気持ちがあった。
ジイチャンの玄関で靴を脱いでから
ジイチャンが寝かされている広間に着席するまでの間
一度も
母の姉一族の顔さえ見なかった。
広間に寝かされているジイチャンを
たぶん10年以上だろうな。
それくらい久しぶりに見た。
ジイチャンの顔は
骨ばったミイラみたいだった。
随分とまあ
ジイチャン、縮んじゃったな。
目に涙が溜まった。
奥歯を噛み締めて
涙が落ちそうなのを我慢した。
母の姉一族に
俺が泣いている姿なんて見られたくない。 ( 後々、こういう我慢がいけなかったと思った )
見られてなくても
おまえらと同じ場所で泣いて堪るか。
おまえらの悲しみと
俺の悲しみは別のものだ。
同調なんてして堪るか。
そんな気持ちだったと思う。
葬儀屋がやってきて
ジイチャンに湯灌を施す。
湯灌つうのは
遺体の髭を剃ってくれたり ( 人間は死んでからも髭が伸びるらしい )
体を拭いてくれたり
香水をかけてくれたりするやつ。
なるほど、死んだら葬儀屋みたいな赤の他人に
こんな事までされるんだ・してくれるんだ
俺はこんなのやられたくないな。
そんな風に
けっこうドライな気持ちで見ていた。
そして
葬儀屋の手によって
ジイチャンが棺桶に納棺された。
きっと棺桶は中国製なんだろうな。
テレビでやってた。
日本の棺桶の80%は中国で製造されてるって。
葬式に使用する物くらい
せめて全部、日本製でやって欲しいよな。
アリガタミみたいなものがさあ.....
あれ?
そんな事よりも
ちょっと待ってくれ。
葬式の事を何も知らない俺は焦った。
もしかしてこれでジイチャンの顔は見納めなるのか?
ちょっと待ってくれ。
もう少し、顔を見せてくれ。
( 実際には、その後にも何度かジイチャンの顔を見られる機会はあった )
ジイチャンの入った棺桶が
ワンボックス車に乗せられて
葬儀場に送られる。
ジイチャンの葬儀場は
昔はゲームセンターだったのを
葬儀場に改装された建物だった。
後はお通夜だかなんだか知らんけど
親戚同士で
仕事は上手くいってるか?
だの
あそこの家で子供が生まれて
だの
今後の天気の移り変わりがどうのこうの
なんなんだよこれは?
故人を思い出して懐かしんだり悲しんだりする行事じゃないのかよ?
葬式とか通夜とかってのはよ?
意味が分からねえよ。
宗家だとか分家だとか
ぜんぜん顔も分からない人間が
どうのこうの世間話をして
ああ、もう、俺に話しかけんなよ。
誰だよ、てめえは。
『 今日も寒いですねー。 昨日よりはマシですかね? 』
知るかよ。
そうですねー。 としか返しようがねえだろうが。
だから、おまえ、誰なんだよ?
ジイチャンのなんなんだよ? なに関係者なんだよ?
話しかけるならジイチャンについて
何か知っている事を教えてくれ・話してくれよ。
おまえが寒かろうが暑かろうが
どーーーでもいいんだよ。
ということで
知らぬ人らの輪の中から外れて
喫煙所でモクモクと時間を過ごすしかなかった。
何度か席に戻ったりもしたけど
やっぱり居心地が悪くて
数分後には喫煙所で煙に巻かれていた。
そうしていると
親戚の大工のオッチャンが俺に話しかけてきた。
どうせ同じ事だ。
『 外仕事は今時期つらいな。 』
『 俺は13日から建前だよ。 まったくもう。 』
『 どうだ? そっちの仕事は上手くいってるか? 』
ほうらみろ。
やっぱり同じ事だ。
「 ええ、ほんとに寒くなったから大変ですね。 」
「 はい、なんとか忙しくやってます。 」
もう、いいよ。
俺は独りで放っておいてくれよ。
何度かそう思った。
でも、おかしな事に気づいた。
俺が席を外して喫煙所に向かう度に
大工のオッチャンも出てくる。
もう、話す事もないのに
俺の向かいのソファーに腰掛ける。
沈黙同士。
『 そういえば、海の家は利用してるのか? 』
「 ああ、はい、海遊びするから日曜とかは、だいたい使ってます。 」
『 おお? 今でもやってるのか? 雪降ってるのに? 』
「 ええ、寒いですけどね。 」
『 そうか、ふーん。 寒いだろうなー。 』
沈黙。
今考えると
大工のオッチャンは
俺が幼い頃からジイチャン家に預けられて
かなりのジイチャンっ子だったのを知っているし
その後のゴタゴタに巻き込まれてからの
俺の境遇も理解している人だから
よく分からないけど
近くに居てくれたのかも知れない。
俺の勘違いかも知れないけれど。
午後10時近くに
喪主家族やら宗家のなんか知らん人らだけ残してお開きとなった。
自宅に帰るまでの車内で思った。
明日はジイチャンの体が燃やされてしまうんだな。
ジイチャン、最後は幸せだったのかな?
曾孫にも囲まれて愛されてたみたいだし
きっと幸せだったよな。
納棺された直後に
バアチャンが棺桶に体を寄せながら
『 ながいあいだ、ありがとうなあ。 』
『 おじいさん、ほんとうに。』
『 ながいあいだ、ありがとう..... ありがとうなあ。 』
そう言って泣いていたよな。
それでも俺は泣くものかと思っていたけど
一筋だけ涙を落としてしまったよ。
一筋だけだからまだ大丈夫なんだぜ。
まだ俺はタフガイだからな。
ギリギリセーフってことだぜジイチャン。
あの母の姉との同居生活で
ジイチャンとバアチャンの関係性も危なかった時期があったのは知ってる。
バアチャンが冷遇されて酷い目に遭わされたのも知ってる。
母の姉に殴られて目の周りが青痣になった時なんか
ジイチャンが止められない・止めないなら
俺が乗り込んで無茶苦茶にしてやろうとも思った。
全部ぶっ壊してやろうか?
くそったれと思った。
そういう環境を作り出してしまった罪は
ジイチャンにもあるんだぜ?
その後の生活はバアチャンにとってどうだったのか
部外者にされた俺には分からないけど
それでも
最後にバアチャンは長い間アリガトウって言ってたぞ。
それで俺は
やっぱりジイチャンだ。
俺の知ってるジイチャンだったんだと思った。
嬉しかった。
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